アートに塗れる休日。
連休を利用して、豊橋へ行ってきたわけですが、目的のイベントに行くだけではもったいないし、時間もあまっていたので、同時期に開催されていた、「あいちトリエンナーレ2016」を観てきました。
美術館に作品を並べるだけでなく、町中でアートをしようという現代アートイベント。現代アートってなんだか、難しそうって思ったけれど、とても興味深くて、なんだか、心惹かれる展示でした。
最初は、初日の夕方。ちょっと時間潰しのつもりで、水上ビルでの展示を見学しに行きました。
【チケット売り場のガシャポン】
ガシャポンで豊橋会場だけを観られるチケットを購入。そのまま、水上ビル会場の展示を見学しました。ビルの一角、テナントの代わりにアートが展示されている。
最初に観たのは、映像作品。ものすごく単純なのに、なんだか恐ろしくて、研ぎすませて、削ぎ落とすことで、強いメッセージ性を持たせているような気がしました。
それは、すべての展示において言えることかもしれない。
10分ほどの映像作品を観た後は、メキシコの芸術家が、コンクリの袋を使って作った雑誌などを展示してるところへ。実際に手に取って観られのは、新鮮でした。作品は、何種類もあって、可愛らしいコラージュから、風刺的な面白おかしいもの、そして、強いメッセージを込めた何かなど、色々なものがありました。
さらに、移動して、今度はビルの上から下まで使った作品を観ました。観ました、という言葉が適当ではないような気もするけれど。
元は居住スペースだったところをすべて鳥小屋にしています。文鳥を100匹ぐらい入れているそうです。部屋ごとに複雑に組まれた止まり木が広がり、縦横無尽に文鳥が飛び交います。鳥小屋というには、広すぎる。その中に入ると、自分は、作品を観ているようで、作品の中に入り込み、いつまにか、作品の一部にされているような気になって来ました。
水上ビルの展示を観たところで、ビール電車の集合時間が迫っていたので、ここで移動することにしました。
他の会場を観に行ったのは、翌日のことです。
駅の近くにある美術館の展示。どちらも巨大です。芝生に巡らされている糸は、さらに毛糸などを紡がれていました。壺のようなオブジェは、夕方にはライトアップされるそうで、それも観てみたかった。
今度は、大通りの開発ビル会場へ移動。そこがメイン会場と言ってもいいようで、10階から5階までをすべて展示スペースとして、順路に沿って、進んでいくようになっていました。
この開発ビル自体、割りと古く、ところどころレトロで、それ自体が何かの装置のように思えてくるから、不思議です。順路にも意味があるような気がしたのは、その開発ビルの造りにもアート性を感じたからかもしれません。
最初は、水墨画の作製工程を映像化したような作品。黒だけの世界。
それから、展示を進むごとに色が増えて行きます。
【カラフルの先にある青】
途中の展示で、作成パフォーマンス映像を流していたのですが、力強さと繊細さ、トランス状態のようで、先をみている。芸術家の内包する矛盾を垣間見たような気がしました。
色の世界に圧倒され、ビルの打ちっぱなしの階段を降りて、次の部屋へ行くと、そこは真逆の世界でした。
【白い世界】
白い壁に白い塗料を載せるように描いています。ものすごく細い。単純な線の組み合わせが複雑な模様を作り出している。
そして、移動しようとドアを開けた時に、ああ、これはビル自体もアートなんだと思いました。
【カラフルな階段】
これは、下から上を見るんじゃダメなんだなと、この先に何があるのか、一層ワクワクしました。
【エヴァのアダムかと思った。】
この手前には民族衣装のようなオブジェが並んでいます。抑えた色味だけれども、パーツの一つ一つが丁寧に作り込まれていました。
隣の展示は映像作品。鮮やかな田舎の風景。3方面にスクリーンを配置し、左側だけ上下が反転している。
次の展示室は、再び黒一色。壁の一面が黒い絵で埋め尽くされています。最初はなんだかわからなかったけれど、ところどころにある説明やメモ書きを見て、アスファルトを転写したものだとわかりました。
アスファルトに紙を敷き、その上を鉛筆でひたすらなぞる。
【豊橋市内のマンホール】
白い紙に模様があるものをなぞれば、わかりやすいけれど、黒い紙を使うことで、一層深みが生まれているような気がしました。
次の展示は、映像とオブジェの併合作品でした。東海道五拾三次をモチーフにしていったので、同じく関東から来ている私には、なんだか馴染み深かかったです。
【映像の中で使ったものや作られたものをオブジェとしている。】
次も映像作品。4つのカメラで同じものを時間差、アングルの差で撮っていく映像。
【映像作品と同じモチーフの写真展示】
給湯室が展示室として使われてたのが、なんかオサレでした。
次は、廊下を進むと、暗い部屋に通される。天井が煌めいている。
【無数の円盤に反射した光が天井に写っている】
隣の部屋に進むと、何もない。明るい方を見ると、壁が丸くくり抜かれ、中にソファと裸電球がぶら下がっているだけの簡素な部屋。ふと、横を見ると、自分の影が丸の中に映し出されていた。
なんだか静かな気持ちになり、さらに奥の部屋へ進むと、そこは部屋のなかに風が吹いていた。
何度も窓が繰り返されて、外にいるのか中にいるのかわからなくなる。解放と閉塞を同時に味わう。夜に見たら、また違うのだろう。
最後も映像作品。真っ暗な中で、人をダメにするソファに座り、夜の海を見る。
途中から、漁船に引き上げられた魚目線になったりしていた。
ここで、次のイベントの時間が迫っていたので、映像作品は最後まで見れませんでした。でも、雰囲気だけでも味わえてよかった。
ほんの暇つぶしのつもりだったのに、なにかの世界に、どっぷりと浸かった感じで、なんだか心地よかったです。
アートをとても身近に感じられました。
次のイベントでは、下衆い話とか聞いて爆笑してたので、まったく高尚な人間じゃないことは間違いないのだけれど、ほんの少し、何かを感じられる人になれた気がした。