窓の外はゆっくりと幕を下ろして。
先日、代官山蔦屋書店で行われた、幡野広志さんの著書『ぼくたちが選べなかったことを選びなおすために。』の出版記念トークイベントに参加してきました。
会場となる代官山蔦屋書店に行くのは、たぶん、2度め。なんとなく場所は分かるものの、到着が開場ギリギリになりそうだったので、ナビアプリに従いながらの移動となった。
代官山蔦屋書店には、思ったよりも早く到着できたけれど、イベントスペースがわからず、しばしウロウロし、仕方ないので店員さんに声を掛けたら、目の前でした。
ちょうど開場時間だったらしく、どうぞ、と言われるままにスペースに入ると、最前列に陣取ってしまいました。なんか、すいません。普段は子どもたちが座って絵本を読むスペースなのか、周りは絵本の棚が並んでいました。懐かしいタイトルや、面白そうな表紙を眺めていると、開演のお時間。
拍手に迎えられて、幡野さんと、編集を務められた、古賀さんがご登場されました。
お二人とも、なんとなくリラックスされてる雰囲気でした。イベント自体は今回で3度めらしく、1度目のイベントはweb記事にもなるそうなので、これまでと違った話をしたい、ということで、古賀さんから幡野さんへの公開インタビュー形式で、お話が進められました。
メモを取ってたわけではないので、詳細に書くことは出来ませんが、とても興味深いお話ばかりでした。
幡野さんの文章や写真を通して感じていたことが、より深く納得できたような気持ちになりました。
以下、箇条書きで、気になったことメモ。時系列順でもありません。
・物撮りの方が得意。物に込められたメッセージを読み解き、それを写すのが得意。
・ライターさんは、書くことのプロだから、取材でライターさんが来ると安心できる。
・奇跡を信じてると口にだすのは、医療従事者が多い。
・病人が使う仮病は、お世話したい人に役割を与える為。
・病気になったら、感謝しなくちゃダメなのかな?
・元々仕事ばかりじゃなかったから、病気になっても変わらない。
・文章は得意じゃないと思ってる。
・読んだ文章や文体は影響を受けるもの?
・嘘はつけないし、つきたくない。
・迷っている時は、選択肢を多くもっていたい時。選択肢を減らすのが勇気。
あんまり出てこなくて、申し訳ない。お話を聞けば聞くほど、思ってた通りの方だった。
幡野さんの書かれる文章は、かっこつけてなくて、ありのままで、幡野さんだけの文章だと思います。自分は読んだ本の文体などにすぐに影響を受ける質なので、少し恥ずかしいぐらい。
何を見ても客観視しているという幡野さんは、たぶん、文章を読んでも、こんな風に書きたい、と思わないのだろう。
幡野さんの著書を読まれた方の感想で、「欲がなさそう。」と書かれているのを見かけました。それを見て、私は、無いのは、欲ではなく執着ではないかと思いました。
物事を客観視できる方は、たぶん、主体が自分であるということを、より強固に感じているのではないでしょうか。対象と向き合った時、それを外から捉えた時、どちらにしても、視点の始まりは自分なのです。
そして、それは、変えようのない、事実でもある。
執着しないんだろうなと思わせるのは、自分であること、自分以外にはなれないことを認めているように見えるからではないでしょうか。
私が思い浮かぶ執着しない人は、他人にも執着しない、あるいは期待しない人です。
他人に期待しない人は、他人に背負わせない。
背負わされないと思うと、人は近づきやすくなる。
幡野さんが、出会いに恵まれ、いろんな人に好かれている理由が、なんとなく、わかった気になりました。
文章に影響を受けない、という話を聞いて、そう言えば幡野さんからは、カルチャーの匂いがしないな、と気づきました。
私が無知なだけかもしれませんが、幡野さんのことを、何系の人、と言い表すのは難しい気がします。肩書や、役割は色々とお持ちでしょうが、そういうのではなく、カルチャーの系譜としてのカテゴリーが見えづらいということです。私の勝手な思い込みですが。
1時間ほどのトークはあっという間でした。自然体でお話されるので、こちらもリラックスして聞けました。
最期の質問コーナーでは、私が思っていたことを質問してくださった方がいて、なんだか嬉しかったです。
あと、病気になって、人生観が変わったか、という質問に対して、別に変わらない、ヒップホップの人みたいにあらゆるものに急に感謝したりしない、みたいなことをおっしゃってましたけど、ヒップホップは、身近なリアルを語るカルチャーなので、嘘をつけないという幡野さんとは相性良いと思いますよ。突き詰めると感謝しかなくなるっていうのも、人によってはリアルだってことですかね。
余談ですが、お二人が座られた場所の後ろがガラス張りで、まだ明るかった空が話が進むに連れ暗くなっていき、終わってから外に出たら満月が大きく光っていたのが、なんか、良かったです。